林檎を喰らった少女の御噺
いつか少女が呪いをかけた
もう独りの魔女の御噺

ある日
少女は魔女を産んだ
ある日
少女は魔女に出会った
その日
少女は魔女を拒んだ
その日
少女は魔女を憎んだ

黒い染みで渦を創り
扉の向こうで手を拱く
他人の絶望を祈る魔女

ある日
少女は魔女を探した
ある日
少女は魔女を見つけた
その日
少女は魔女を知った
折れかけた杖を握りしめ
震える声で高らかに嗤う
忘却に沈んだ哀れな魔女

ある日
少女は魔女を赦した
その日
少女は魔女を愛した

その胸に抱いて決意した
差し出したのは真っ赤な林檎

ある日
少女は魔女を殺した





< 10,3,22 >